デジモンアドベンチャー
――いま、冒険が進化する
ジャンル:冒険、ファンタジー
通称:デジアド、デジモン無印・初代
あらすじ
1999年8月1日。
子供会のサマーキャンプに来ていた小学生の八神太一、武之内空、石田ヤマト、泉光子郎、太刀川ミミ、城戸丈、高石タケルの7人は突然の吹雪を他の子供達から離れて、山にあった祠に隠れてやり過ごしていた。しかし、その祠の外に出た直後、日本で発生するはずのないオーロラを目撃、さらに謎の機械が降り注いだ。さらに7人の子供達はその機械の謎の力で発生した大瀑布に吸い込まれ、気がつくと未知の場所にたどり着き、そこで自分達を待っていたと言う「デジタルモンスター」と名乗る謎の生物達と出会う。
そして子供達とパートナーデジモン達の、長くて短いひと夏の冒険が始まった。
評価
ストーリー :★★★★☆ 意外性 :★★☆☆☆
キャラクター :★★★★☆ アクション :★★★☆☆
世界観 :★★★★★ ギャグ要素 :★★★☆☆
評論家気取れ度:★★☆☆☆ 音楽 :★★★★★
見切り基準:3~7話
感想
高評価は思い出補正だと罵られる伝説級の名作。本筋のストーリーを追いながらも各話ごとに完結する子供向けのスタイル(特撮やロボットアニメなどを思い浮かべてほしい)なせいか、視聴者の見方によってストーリーの評価が極端に分かれる。メインは冒険や子供たちとデジモンの成長と繋がりなので、毎回の戦闘描写は淡泊だ。進化演出や必殺技は繰返し見るはめになり、そういったお約束に飽きやすい人には辛いだろう。キャラクターの多さや幼さによって序盤で見切られやすく、アクション性や急展開を望む人には向いていない。
このアニメの名作たる所以はキャラクター達の冒険の末の成長にある。子供的な目線でみれば、デジモンの進化が成長の指標になりがちだが、終始キャラクターの軸の性格が変わるわけではない。そのため表面的に見ていただけでは違いがわからず、説明を求められてもできないだろう。しかしその他の何気ない演出の積み重ねにこそ成長が描かれており、子供達もデジモン達も日常的な仕草やセリフ回し、行動原理をとってみれば徐々に、しかしさりげなくも明らかに序盤とは変わっている。また紋章の意味のみに成長が注目されがちだが、紋章はあくまで特徴的な面なだけであってすべてではない。それは最終決戦の子供たちのセリフに表されている。
感動ものアニメで必ず話題にでるのがこのアニメの最終回である。この話の完成度の高さはこの上なく、無駄に語るのは愚の骨頂。しかしあえて言うなら全54話あってこその最終回であり、その中に蔑にしていい話もシーンもない。OPやEDの曲も可能な限り毎回聞いておくことをお勧めする。予告も大事な要素。……ED見てたら酷いネタバレがあった?そんなの当時の子供ですら全員がツッコミをいれたさ。
ただこのアニメの非常に残念なところは、1999年を肌で感じていなければ世界観の共感を得難い点だろう。エヴァ等、他のアニメでも時代背景が話題にされることは多々あれど、この作品以上に時代に影響を受けた物は近年ではないだろう。
放送が開始された1999年とはまさに世紀末であり、子供達には希望と不安に満ち溢れていた時代だ。当時は都市伝説やオカルト系のTV番組が話題になりやすく、ノストラダムスの大予言として1999年の夏には恐怖の大魔王によって世界が滅ぶといわれていたし、明くる年には2000年問題で世界中が大混乱するとも言われていた。
現実問題としては、地方ですら都市開発によって自然の遊び場が目に見えて減少し、公園の遊具も危険という理由で撤去され始め、球技等は禁止された。また凶悪事件の影響や塾・習い事が一般家庭に普及し始めたことも相まって、外で遊ぶ機会は奪われていった。
しかしながら世間一般では子供は外で遊ぶことが大人たちにとっての常識であり、絶対的な価値観であった。それは室内でゲームで遊ぶことが社会問題になるほどに。つまり大人によって外での遊びが制限されたのに、大人によって外で遊ぶことを強いられたのである。
そういった大人から垣間見える矛盾と、不安感と閉塞感のある時代背景を子供ながらに感じ取っていた世代でなければ、このアニメの荒唐無稽な世界観や終末観はわかり難い。夏に降る雪に始まり、草原にある踏切、砂漠の道路標識、湖の路面電車といった矛盾に満ちたちぐはぐな世界、お台場に降り立つ恐怖の大魔王、電脳世界と融合して大混乱する現実世界、これらはまさに1999年の空気そのものである。細かい話をすれば、太一が現実世界に戻ってきた日付は8/1、その回の放送日も8/1など生で見ているからこそ伝わる設定も多い。
そんな世界を、大人たちの手を借りることなく、なんら制限なく自由に冒険することに当時の子供が憧れてしまうのは至極当然であり、未だに胸に刻まれているのはなんら不思議ではないのだ。
それ故にこのアニメは1999年だから大ヒットしたといえる。1998年や2000年では02やテイマーズのようにただの良作止まりだっただろうし、現代からみればよくあるちょっと奇抜な色物扱いされそうだ。
◇このアニメを視聴した人への無難なおすすめ
あの日見た花の名前を僕たちは知らない。、CLANNAD after、
映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
◇別視点からのおすすめ
シリーズディレクター:角銅博之
シリーズ構成:西園悟
制作:東映アニメーション
音楽:有澤孝紀
話数:54話
前編
映画『デジモンアドベンチャー』
続編
映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
デジモンアドベンチャーtri